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2011.05.06 寅さん

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大震災の日、勤め先の千代田区から中野区の自宅まで徒歩帰宅してみた。車道は駐車場と化し、歩道は人で溢れかえっている。やはり災害時は尋常ではないのだと実感した。広い交差点で歩行者横断に信号3回待ち、それでも渡れず遠回りを承知で途中までplan‘B’で行くが、これが相当遠回りとなってしまった。最短13キロ強だが、この日はそんなわけで15キロ。で3時間ちょいかかった。川のように流れる歩道では休むところもタイミングもなく、仕方なく歩き続けた。沿道のコンビニなどはどこもひどく混雑しており、立ち寄る気にもならなかった。あの日以来、しばらくの間は頻発する余震に怯えながら生活していた。体も揺れに敏感になってしまい、どこかにセンサーを組み込んだかのように微細な揺れにも感応できるようになった。
2011.05.06 寅さん_e0183673_9261942.jpg折角例年以上の雪に今シーズンはテレマークも精進しようと考えていたが、やはりこれもあの日以来消し飛んでしまった。そして大型連休も泣かず飛ばずだったがさすがに持て余し、気晴らしに念願の?「葛飾柴又です!」まで行ってきた。ご存知「寅さん」で見るよりもこじんまりとした街で、帝釈天の参道などもそれほど長くはなかった。駅前の「寅さん」に挨拶してから寺に向かうと随分立派な店が両側に展開していて浅草仲見世よりちょっと風情をとどめているような感じである。本堂に上げていただくとと、幾度となく映画に出てきた境内が美しく広がる。回廊に上がると御前様(笠智衆)と同じ目線で境内が見渡せる。今にも雪駄履きの寅が我次郎を追って山門から飛び込んできそうだ。2011.05.06 寅さん_e0183673_9274539.jpg楽しい妄想は尽きないが、その足で少し離れた寅さん記念館に向かう。途中葛飾区が保存してるという「山本亭」の庭先を通って表に飛び出すと記念館の真裏に出る。なぜ真裏なんだろうと首をひねるのだが仕方ない。回り込んで記念館に入った。この建物は巨大なトーチカのようで、横を流れる大河、江戸川の土手と一体化しており、建物の前後から階段を上るとそのまま土手に通じるようになっている。土手を川に沿って下れば水元公園。上れば矢切りの渡し。そういう所に建っているのだった。美術館、博物館の類ではないので展示物の数も多いわけではないが、寅さんという全48作の映画にまつわる展示物が面白く見られるように配置されていて、ちょっとロケ現場のようで楽しい。お馴染み「とらや」のセットなどは大いに気に入った。いたるところで映画の一場面が映し出されており、ついつい立ち止まっては見入ってしまうことになる。寅さんこと渥美清が逝って15年。思えばこのころの俳優は端役から主演まで、誰もが一切私生活の臭いをさせず正に「銀幕のスター」達だった。そのカリスマ性が作品を見る者に夢を与えたのだと思う。メディアに媚びてちょろちょろあちこちに顔を出さず、叩かれてもじっと沈黙し、作品の中でこそ生き生きと役を演じて見る者に夢を与える。そんな俳優堅気のある時代だった。渥美清もまた然り。だからこそ今でも寅さんも生き続けているのだと思う。映画の中の人物としてではなく、実際にいた男のように。

by 50SanKai-club | 2011-06-08 05:20 | 徘徊  

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